どうも、元消防士のてぃんです。
今回は、【消防士の実際の現場での活動について”火災編”】Prat2です!
内容としては実際に火の中でどうやって活動しているのかというお話です。
前回のPrat1で書ききれなかったことをたくさん書いていきますね。
Part1の記事とても好評でした。ほんとにありがとうございます!
それでは本題に入りますね。
火災現場で火の中に入る前の準備
前回の記事で消火栓を開けて水を出すまでの準備の話や、資器材の搬送のお話はしているのでいよいよこれから火の中に入るぞという段階のお話になります。
空気呼吸器(面体)の準備
火の中に入る為の1つ目の大切な資器材が「空気呼吸器」です。火災の現場で熱さと共に消防士達の敵となるのは煙です。例え火が出ていなかったとしても、この煙によって気道を火傷したり最悪の場合、命を落とします。
それを防ぐ為にこの空気呼吸器を背負って、「面体」というものを顔につけます。
要は、煙を吸わないようにして酸素ボンベから新鮮な空気をもらうんです。
空気呼吸器の使用可能時間については一応計算式はあるんですが、その時の環境などにも左右されるのでざっくり言わせてもらうと20分前後です。(※残りが少なくなると警報が鳴るのでその時は一旦火の中から脱出します。)
放水する為のホースは必須
そして火の中に入るわけなのでもちろん水は必須です。
そして後で説明しますが、このホースが命綱代わりにもなるんです。
投光器(ライト)の準備は必須
これも必須です。火災現場の中ってほんとに目隠しをされてるみたいに真っ暗なんです。だから投光器(ライト)の光は必ず必要なんです。
また投光器には後2つ重要な役割があります。
1つ目は、ブザーがついているので逃げ遅れた方を発見した時や緊急時に周りに知らせることが出来ること。
2つ目は、投光器はコードで繋がっていてこのコードは50mあるんです。つまりこのコードもさっきのホースと同様に命綱代わりになるということです。
ここまで火の中に入る前に準備する事について書いてきました。皆さんお気づきですかね?要するに上記の3つは自分達の命を守る為に絶対に必要な資器材なんです。
(※人を助けるって凄くカッコいい事だと思うんですが、だからこそ自分達の命は自分達で守らなければいけないんです。自分たちが命を落としてしまったら人助けなんて出来ませんからね。)
火災現場での隊員達の役割
1つの部隊は隊長・隊員・機関員で構成されています。
ここでそれぞれの役割について説明していきますね。
火の中に入る時、基本は放水担当2人+隊員2人
基本的にはホースを持つ放水担当が2人と人命検索をする隊員2人で火の中に進入していきます。
そして火の中に入らずこの4人を外から指揮する中隊長という存在が1人います。
それぞれの役割について説明していきますね。
中隊長
まずは、この中隊長という存在。火の中に入る隊員達の指揮をとります。
ですので基本的には中隊長は火の中には入りません。
火災現場の指揮に加え、隊員達の安全管理も任されているわけです。
小隊長
そして、中隊長の下に小隊長という存在がいます。
この小隊長が火の中に入るメンバーの中では指揮を任されます。
分かりやすくいうと、外で全体を見ながら指揮をとるのが中隊長、火の中で水を出しながら隊員達と行動するのが小隊長というイメージですかね。
火の中に入る隊員達
そして、小隊長とともに火の中に入り人命検索をする隊員達。
消防士としてのキャリアはこの隊員から始まります。
中隊長も小隊長も機関員も必ずこの隊員としての活動を経験しています。
火の中での活動について
放水の仕方(水のかけ方)
まず、放水について説明しますね。
僕ももちろん実際に火災現場で消火したことがありますので経験も踏まえてご説明します。
実は、ただ火を消す為に放水している訳ではなく、いくつかの状況に応じて使い分けているんです。
・消火するため
1番分かりやすい放水の役割としては消火のためですね!
消防士はもちろん火を消す為に仕事している訳なので。
この消火する為の放水の時に意識していることは、直接注水と間接注水という2つの方法です。
- 直接注水:言葉のままですが、燃えてる物体に大して直接放水する方法です。
- 間接注水:これは天井などに放水をして壁で反射させて燃えてる物体に水をかける方法です。
(※消防用のホースの水圧はかなり強いので、もし人間が直接放水を受けると大事故になりかねません。そう言う場合などに間接注水をしたりします。)
・排煙するため
そして放水の2つ目の役割は排煙(煙を外に逃すこと)です。
先ほど投光器のお話をした時に火災現場の中は真っ暗だと言いましたよね。
これは煙のせいなんです。だから、煙を真っ先に排除したい。
その為に放水をします。
この場合、噴霧注水という放水方法を使います。ちなみにもう一つはストレート注水というもの。
- ストレート注水:これは基本的に消火を目的とした注水方法です。放水の範囲が狭く、勢いが強いのが特徴。(※こんなものを人間がまともに浴びたら大事故です。)
- 噴霧注水:こっちが排煙する為の噴霧注水という方法。言葉のイメージでなんとなくは分かりますよね。放水の範囲が広く、その分勢いがなくなるのが特徴です。
この噴霧注水を使って煙を包み込むようにして、外に逃します。
(※先ほど、火災現場では煙を真っ先に排除したいというお話をしましたよね。だから隊員達も火の中に入って窓などを見つけたら煙を逃す為にまず窓を開けます。)
噴霧注水の画像はちょっかり日記さんのブログから引用させて頂きました。
・仲間の隊員達を守る為
そして、放水は仲間達を守る為の役割もあるんです。
これは今説明した噴霧注水を使います。放水担当が2人いるというお話をしたと思うんですけど、1人は火災現場の最前線で消火活動をしています。実はもう1人は隊員達の後ろから隊員達に向かって噴霧注水してるんです。
火災現場での熱気はほんとに想像以上のもので例え何mか離れていても熱気で火傷してしまうレベルです。それを防ぐ為に噴霧注水をして隊員達を少しでも冷やしてあげます。
(※何度も言っていますが、ここでストレート注水をしたらとんでもないことになります。)
人命検索の仕方
次に人命検索の仕方について説明しますね。
繰り返しになりますが、火災現場の中は基本的に真っ暗なので手探りでの検索活動になります。
要は目隠しをした状態で探すようなイメージですね。
そのような過酷な状況なのでいくつか意識しているポイントがあります!
・中性帯
まず、知って欲しいことが1つだけありまして。
火災の初期段階時の煙の性質として「中性帯」というものがあります。
下の動画の通り、綺麗に煙の境目が出来る状態です。
よく防災訓練などで「姿勢を低くしてね」って言っているのはこういうことです。
そして、隊員達もこの状況であれば活動しやすいのでおそらく放水する前に人命検索を優先します。
(※放水する事によって煙が拡散して中性帯が無くなってしまうので。)
・検索体形(人命検索をする時の体形)
そして隊員達も姿勢を低くして火の中に入っていく訳なんですが、もちろん命綱などをつけないでむやみに入っていく訳ではなく、命綱代わりにロープを使い検索体形を作って進入していきます。そしてこのロープを外から管理するのが中隊長です。検索の形には大きく2つの検索体形があります。
(※頑張って分かりやすく説明します!)
というわけで、僕のお恥ずかしい訓練ノートを引っ張り出しました。(笑)
この緑で囲まれた所を見て欲しいんですが、外にいる進入管理者というのは基本的に中隊長の事です。
このイラストは進入管理者と隊員2人の3人がそれぞれロープで繋がってると思って下さい。
言葉で伝えるのは難しすぎます。(笑)
2つの検索体形の違いはもうほんとにイラストの通りです。
このイラストで出てきているカラビナともやい結びについて説明しますね。
・カラビナ:金属の金具で登山とかにも使うやつです。ロープを繋ぐのに使います。
・もやい結び:火災現場でよく使うロープの結び方です。キャンプとかでも使ったりしますし、解けにくくてとても便利ですよ。
もやい結びの作り方はこちらの動画でぽむさんがめちゃくちゃ分かりやすく説明してました。
- 直列体形:基本的に火災現場ではこの検索体形で活動することが多いです。普通の住宅などを想像してもらえれば分かると思うんですが、広さ的に並列体形をとるほどではないんです。
- 並列体形:これは例えば大規模な倉庫だったり、工場などで使う検索体形です。特徴は2人が横並びで幅広く活動する事が出来る所です。
・壁伝えで検索をする
これは検索体形に関わらず常に意識するポイントで、火災現場で真っ暗な中、自分が今どこにいるのかを把握する為に基本的に足か手で壁を触りながら進入していきます。
なので、部屋の中を左回りでいくのか右回りでいくのかを先に決めてから進入します。
脱出経路の確保(緊急時)
ここまで記事を読んで頂いている方は分かると思うんですが、ちょいちょい命綱というワードが出てきていますよね。
消防士達は火の中で全力で活動する訳なんですが、時には安全の為に脱出しなければいけない時もあります。そしてそれがこの後に説明する「命に直結するような緊急時」の場合だってある訳です。
そんな時に隊員達が1度入ってきた道を戻れるように「ホースを絶対に手放さない事」、「検索の時にはロープを使う」というのがとても大切な命綱になるんです。
そしてこの命綱を外から管理するのが中隊長です。
(※とんでもない緊急時には中隊長は隊員達と繋がっているホースとロープを火の中から引っ張り出します。)
火災現場で注意する危険ポイント
天井や壁の崩落危険
火災の現場では、天井や壁が壊れることは多々あります。
なので安全に注意しながら活動するわけですが時に事故も起きてしまいます。
これは火災現場の壁が崩れてしまって隊員の方が下敷きになってしまった動画です。
床抜け危険
もう1つ注意しなければならないのがこの床抜けというものです。
言葉の通り床が抜け落ちてしまう事です。昔ながらの木造建築物などの場合特に注意が必要ですね。
これは焼け跡の写真なんですが、ほんとにこんな感じで床もそうだし壁とかも焼けてポッカリ。
フラッシュオーバー
最後にフラッシュオーバーというものについて説明します。
まあ簡単に言うと爆発ですね。
爆発というと「バックドラフト」という映画を思い出す人もいるかもしれませんね。
この2つは実は違くてそれぞれ特徴があります。
ちなみに僕が火災現場で実際に経験した事があるのはこのフラッシュオーバーでバックドラフトを経験した方は少なかったと思います。
・フラッシュオーバー
まずフラッシュオーバーですが、これは急激な燃焼拡大の事を言います。
この動画が割と分かりやすいと思うんですが、炎はまず天井に向かって真っ直ぐ燃えていきます。
そして天井に達するとロールオーバーと言って、天井を這うように燃焼拡大します。
そしてこのロールオーバーがフラッシュオーバーの兆候で、この段階までくると一気に炎は拡大していきます。ですので、消防士達は火災現場でロールオーバーを確認したら基本的に脱出や炎から距離を取ったりします。
・バックドラフト
そして、映画にもなった【バックドラフト】
僕個人的にはバックドラフトの方が爆発のイメージに近いかなと思っています。
特徴は、密室のような気密性の高い場所で一時的に酸素がなくなり、炎が消えた様な状態になることです。
燃焼する為には、次の3つの要素全てが必要なんです。
①熱源(火そのもの)
②酸素
③可燃物(燃えている物体)
つまり、密室内の酸素が全て燃焼に使われて新しい酸素が入ってこない限り燃焼は起きません。
この状況が一時的に炎が消えたような状態です。めちゃくちゃ危険!
(未燃性ガスがまだ残っているこの状況で、新しい酸素が急激に入ってきたらどうなるかはもう想像がつきますよね。)
少し長いですので、待ちきれない方は2:35あたりまで飛ばして下さい。
ここで再びドアを開きます。そして爆発が3:17ぐらいです。
また、もし現在消防士を目指している方がいればこちらの記事もご覧ください。
【まだ間に合う!】東京消防庁に3ヶ月前からの対策で受かる方法。元消防士が試験勉強のコツを教えます。
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